自分はラブライブ!というコンテンツにハマっては熱が冷めて離れるというのはこれが始めてではない。
なんなら三度目だ。
もし、また自分がラブライブ!のライブに行きたいなどと言い出した場合はこの気持ち悪い文章を見せてやってほしい。
- 1.微熱からMystery
- 2.未熟DREAMER
- 3.無敵級*ビリーバー
- 4.NEO SKY, NEO MAP!
- 5.CHASE!
- 6.終点の先が在るとするならば。
- 7.ノンフィクション!!
- 8.La Bella Patria
- 9.Not Sad
1.微熱からMystery
最初にハマったのは高校生のときのμ'sだった。
触れ始めた理由はクラスメイトがスクフェスをプレイしていたからというどこにでもあるような理由だった。初めて触れるアイドルコンテンツというのもありアプリをiPhoneに入れてからハマるまでに時間はかからなかった。
確かμ'sで好きなキャラは小泉花陽だった。
しかし、初めて触れるアイドルコンテンツであるがゆえに冷めるのも早かった。
アイドルらしい楽曲が自分はそこまで好きではなかったのだ。
少し表現が荒くなるが、かわいいメロディにキラキラした歌詞を乗せてアイドルらしく歌い上げているような楽曲が自分の心には響かなかった。メロディか歌詞のどちらかだけなら好きという楽曲は山ほどあるがその両方を満たしてくるような楽曲はどうも苦手だった。
次元こそ違えどAKB48やモーニング娘。などアイドルの楽曲に触れる機会が日常にはあったにも関わらず、ラブライブ!が自分にとって最初に触れたアイドルコンテンツになったのはそういうことだったのだと思う。
そのような状況で、自分の好きな小泉花陽が所属していたPrintempsは他のユニットに比べるとアイドル色が強いユニットだった。Love marginalやUNBALANCED LOVEのような例外もあったが、苦手で一度しか聞かなかったような楽曲がほとんどだった。
キャラは好きだけどそのキャラが所属するユニットの歌う楽曲は好きじゃないというのは当時高校生だった自分の熱が冷めるには十分過ぎる理由だろう。
冷めている間にμ'sのラストライブがあったが、そのときの自分は『これで終わりなんだ、そっか。』以外の感情がなかった。
2.未熟DREAMER
次にハマったのはラブライブ!サンシャイン!!の劇場版公開直前の時期のAqoursだった。
μ'sの熱が冷めている間に入った別コンテンツのコミュニティでは自分を含めラブライブ!を経由してからそこに流れ着いたタイプのオタクが多かった。その中には現在進行形でラブライブ!が好きというオタクが少なくなかった。むしろ大半がそうだった。
そのようなオタクが集まった酒の席ではラブライブ!の話題になることが多く、向こうからμ'sの後輩ユニットにあたるAqoursの楽曲を勧められるような機会も少なくなかった。
そこで勧められた楽曲の中にAqoursのStep!ZERO to ONEがあった。
最初に聞いたときの感想は弾むような心地良いメロディが好き、というモノだった。ただメロディが好きというのは繰り返し聞く理由としては十分だった。
聞いてるうちに何度も繰り返されるフレーズである“ゼロからイチへ”が気になった。あそこまで繰り返されるとイヤでも耳に残るというものだ。
そのとき知り合いの中で一番Aqoursにハマっていたオタクに「このフレーズ何度も繰り返されているけどどういう意味なの?」と聞いた。
返答の内容は「アニメ本編に全てがあるから見てこい。ストーリー自体もお前の好きなタイプだ。」というものだった。
そのオタクが言っていたようにアニメには“ゼロからイチへ”の答えがそこにはあった。
言われていた通り自分好みだったアニメはとても良かった。全員が同じ方向を向いて努力して、ときには壁にぶつかることがあるけれども、そこは主人公である高海千歌がメンバーを引っ張って乗り越える。そんなアイドルアニメなんだけどアイドルらしくない、どちらかと言えばスポ根アニメだったところが自分には響いた。
ちなみに、小原鞠莉が好き。特に小原鞠莉が松浦果南の頬を引っ叩くところから未熟DREAMERまでの流れが大好き。
火が点いてからは高校のとき以上にAqoursのセカイにのめり込んでいった。
一方でAqoursの楽曲にはμ'sのときにはなかった違和感があった。感じた違和感の正体とは、μ'sのときにはイヤというほど感じたアイドルらしさをAqoursの楽曲からいい意味で感じられなかったことだった。自分の苦手なあの感じがほとんどない。
上手く表現することができないが、アイドルっぽさはありつつもそれを全面的には押し付けてくるようなことはなく、別の要素も交えながら訴えかけてくるような楽曲が多かった。アイドルらしくない泥臭さ汗臭さがAqoursの楽曲にはあった。
繰り返しになってしまうが、ラブライブ!無印は王道アイドルアニメだったが、ラブライブ!サンシャイン!!はアイドルアニメというよりはスポ根アニメに近かったというのが大きいのだろう。
また、μ'sにハマっていた高校生の頃とは違いアニメやゲームの中で完結することはなく、ライブにも足を運んでいた。
まぁ、実際に行ったAqoursの単独ライブはユニット対抗全国ツアー千秋楽だけなのだが。
その千秋楽ではサンシャインで一番好きな楽曲であるGuilty Eyes Feverが聞けるかもしれないとオタクから言われていたため、直前でチケットを探し公演に参加した。その公演ではオタクの予想通りGuilty Eyes Feverを聞くことができた。
結局Aqoursからも時間が経つにつれて離れてしまうことにはなったが、今回はμ'sから離れたときのようにAqoursに負の感情を抱いてしまい、それが原因で離れたというわけではなかった。
一番好きな楽曲を聞けて満足してだんだんと熱が冷めていった結果、自然に消滅したと表現したほうが正しいだろう。
今でも未熟DREAMERや逃走迷走メビウスループやG線上のシンデレラなどライブで、会場に足を運んで聞きたい楽曲は山ほどある。
自然消滅してしまった理由は自分の中でAqoursが自分の中で一番の存在、いや“特別な存在”ではなかったから。
そのときの自分にはAqoursに触れ始める前に出会って大好きになった、Aqours以上に“特別と言えるコンテンツ”があった。そのコンテンツには唯一無二の“特別な存在と言える女の子”がいた。
たとえ、運営の目指す方向性と自分が求めるものがズレて、それが原因で冷めてライブにほとんど行かなくなったとしても、日常的にそのコンテンツについて話す機会がなくなったとしても、その女の子とコンテンツが自分の中で“特別で圧倒的な一番”であることは変わらなかった。
Aqoursはそのコンテンツの一つ下の二番目だっただけ。ただそれだけだった。
二番目の淡い光では一番の存在が放つ強い光には勝てない、そんな当たり前のことだった。
3.無敵級*ビリーバー
時は流れて2021年。
どうやら自分は2年ごとにラブライブ!というコンテンツへの熱が再燃するらしい。
移動中に聞く楽曲がパターン化していた自分は2年前に好きだったAqoursの楽曲が突然聞きたくなった。このとき自分が音楽を聴くのに利用していたのはApple Musicだった。
2年前はレンタルなりで音源を取り込んでそれをiPhoneに移して聞いていたが、その手間を省いて楽曲に触れられるこの手の配信サービスはとても便利だった。
懐かしさを感じながらAqoursの楽曲を聞いているうちにApple Music側からあなたへのおすすめとして虹ヶ咲やLiella!が提示されるようになった。
この時点での虹ヶ咲とLiella!のイメージは良くはなかった。
虹ヶ咲にアイドルらしさを全面に押し出したあの楽曲のイメージが苦手だったし、Liella!に関しては絵のタッチが好きじゃないといったもの。
…...その翌年は虹ヶ咲とLiella!に染まった1年を過ごすことになるのだが。
Apple Musicの提示するプレイリストを移動中に聞く日々を過ごしている中で一つだけ引っかかる楽曲があった。
それが無敵級*ビリーバーだった。
この楽曲の存在自体は、ラブライブ!というコンテンツに興味が薄かったときから知っていた。
作曲があのDECO*27であることがリリース時にTwitterで話題になっていたからだ。作曲があのDECO*27ならとりあえず聞いてみるかと思い聞いてみた。
歌詞には一歩前に踏み出す勇気がなかなか出せない女の子について書かれていたが、メロディにはそんな負のイメージを感じさせないようなポップな感じに仕上げられていて、なおかつどこか懐かしさも感じさせるようなところが聞いてて気持ちよかったことを覚えている。
だが、そんな第一印象を抱いたとしてもラブライブ!への興味がなくなっていたあの頃に繰り返し無敵級*ビリーバーを聞くことはなく、Twitterなどで無敵級*ビリーバーの話をしたのもその日だけだった。
ただ、1年前とは違ってAqoursの楽曲を通じてラブライブ!への熱が少しずつ戻りつつあった2021年にこの楽曲を再び聞くのでは話が変わってくる。
『なんだこの曲めちゃくちゃいい味するじゃねえか。』
自分の中で無敵級*ビリーバーという楽曲は、一歩前に踏み出す勇気がなかなか出せず、目の前で輝いている子を後ろからただ眺めているだけの自分から変わりたくて、もっと輝ける自分になるために鏡の中にいるもう一人の自分に鏡の前に立つ自分が魔法をかけてもらうというものだった。
一歩踏み出すために自分に魔法やおまじないをかけて自分を元気づける自分のための応援歌のような楽曲が、自分は大好きだ。
この楽曲にここまで惚れ込んだのは、日常のどんな一瞬も、世界一の作曲家としてヘタクソでデタラメなメロディに乗せて“おまじない”として本当は臆病な昨日の自分にプレゼントする、そんな詞が書かれたとある“特別な楽曲”と重なるところがあったのかもしれない。
聞けば聞くほど、歌詞を噛みしめるほどに自分の中で無敵級*ビリーバーは“特別な楽曲”に近づいていった。
4.NEO SKY, NEO MAP!
虹ヶ咲に触れようと思ったキッカケとなったのは、自分の中で“特別な楽曲”に近づいたこの無敵級*ビリーバーだった。
La Bella PatriaやMELODYやNEO SKY,NEO MAP!などの楽曲に触れていくうちに、自分の好きな楽曲の背景をちゃんと知るためにアニメも見ることにした。
だが、TVアニメラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は自分でも驚くほど肌に合わず、お世辞にも良いアニメだと言えなかった。
特に上原歩夢が許せなかった。
自分はラブライブ!のセンターやそのシリーズの顔といえるキャラクターには、他シリーズの高坂穂乃果や高海千歌や澁谷かのんのようなものを求めていた。だが、実際に本編でしたことといえば好きな友達の後ろを追いかけているだけで、センターらしい立ち振る舞いは何もしていなかったのが本当に気に食わなかった。それを良しとしているような風潮も大嫌いだった。
同好会の部長は中須かすみだから上原歩夢がリーダーシップを発揮させる必要はないというのなら今すぐコンテンツのセンターの席から降りてほしい。
虹ヶ咲はラブライブ!の番外編みたいなものだと表現するオタクがたまにいるが、タイトルにラブライブ!と付いている以上、自分が上原歩夢がその役割を求めることも間違ってはいないだろう。
もし上原歩夢が、他シリーズのセンター達のような立ち振る舞いをしていたら虹ヶ咲のアニメを嫌いではなく好きに、虹ヶ咲というコンテンツをもっと好きになれていたかもしれない。
虹ヶ咲の楽曲は好きなままでいられたが、このように一度嫌いになってしまうと登場人物の大半が芯のないキャラクターとしか見えなくなってしまい、以降真剣に虹ヶ咲というコンテンツと向き合う気がなくなってしまった。
ただ、アニメを見る前に自分から知り合いに「虹ヶ咲にはいい楽曲が揃っているしライブに行ってみないか?」と声をかけていたことと、その彼とライブに参加するうちに彼が「やっと追いたいと思えるコンテンツに出会えた」と言っていたこともあり、2022年1月のR3BIRTHファンミーティングから1年間ほどライブには通っていた。
真剣に向き合うことができないとは言ったが好きな楽曲は何曲かあったし、その楽曲を会場で聞きたいというだけで参加する理由としては十分だった。
楽曲は好きだからライブは楽しかった、楽しかったのは本当だった。
5.CHASE!
ただ、何度か参加するうちに自分は『ライブ後の感想が楽しかっただけで終わるようなコンテンツが本当に好きなのか、これで自分は満足できているのか』と考えるようになった。このように考えるようになったのは確か、運良くほぼ最前でステージを見ることができた9月の5thライブ後だった気がする。
そう考えているうちに、2023年1月から始まるユニットツアーの内R3BIRTH、A・ZU・NA、QU4RTZの3ユニットのライブに参加することになった。
結論から言ってしまうと、R3BIRTHとA・ZU・NAのライブは心から楽しかったと言えるライブではなかった。
ユニットの楽曲が好きだから自分にとって最初の虹ヶ咲のイベントとして選んだはずのR3BIRTHで、メンバーも好きだったはずのR3BIRTHのライブ後に、自分の口から出た言葉は「今日のMONSTER GIRLSは前回より良かった」というR3BIRTHの出演するライブを見た後に毎回言っていたフレーズだけだった。
他の3ユニットに比べて曲数が少ないことを考慮したとしても、去年からほとんど変わっていなかったことがショックだった。響かなかった、トキメかなかった。
優木せつ菜としての楠木ともりの最後のステージはこの目に焼き付けたいと思い、参加することにしたA・ZU・NAに関しては最悪だった。
A・ZU・NAの楽曲は他の3ユニットの楽曲に比べ、正直に言えば興味がない状態での参加だった。だとしても、会場の作り出す空気に当てられれば楽しめる、何か響く物があると思って参加した。
が、何一つ響かなかった。
自分にとってこれが優木せつ菜としての楠木ともりの最後のステージのはずなのに、やっと声出しが許されたライブなのに、出したい声が喉につっかえたまま出すことができず、終始黙って座ってただ見ていただけのライブは人生で初めてだった。
もちろん、楽しくなかった。
元々声を出してライブを楽しんでいたはずの自分が、会場でただ一人だけ違う空間にいるような感覚でライブを見ていたことがとても辛かった。
その後の打ち上げでは、ライブ後の浮ついた空気を自分の「何一つ感じなかった」の一言で壊すわけにはいかなかったため、ひたすら自分に今日のライブの話が降られないように自分から別の話題を振るなどして逃げていた。
解散後、一人になって考えてやっと答えが出た。
自分はライブには“特別”を“非日常なセカイ”を求めていた。ライブには日常の延長線であって欲しくなかった。
公演中は演者のパフォーマンスやステージ上の演出によって作り出させれるセカイに身を委ね、終演後はそのセカイから抜け出すのが困難な、そのセカイを日常に引きずってしまうようライブが欲しかった。
そのセカイの形成に自分が入り込む隙があって欲しくなかった。そのセカイはファンの何かがないと成立しない場所であっては欲しくなかったのだ。
自分のこの目で見てきたアーティストには圧倒的な歌唱力でそのセカイを作り出し、見ている者をその場に無理矢理引きずり込むようなアーティストがいた。自分はそんなアーティストのライブが好きだった。
歌をメインとして生きているアーティストと、キャラクターを演じるのがメインの声優とでは歌唱力には雲泥の差があるかもしれない。
でも、そのキャラクターを演じる者としてステージに立っているなら歌い方や身振りなどでステージにそのキャラクターを降ろしてセカイを作り出すことだって不可能ではないはずだ。
虹ヶ咲のライブが「楽しかった」の一言で終わってしまうのは自分が求めているセカイが存在しないから、いや、そのセカイは存在したのかもしれないが、今の自分には認識できなかったからだと答えが出た。
なぜ、虹ヶ咲のライブに参加しても「楽しかった」だけで終わるのかがわかったその日は自分にとって最悪の日だった。
6.終点の先が在るとするならば。
ただ、いつまでもこの最悪の日を引きずっていいわけがなく、かといって自分の中で出たこの考えは他人に見せてお互いがスッキリするようなものでもないと考えていた。
だから気分転換としてラブライブ!とは一切関係のないものに触れる時間が必要だった。
そんな中、以前から気になっていたとある音楽ユニットのライブが3月頭に近場で開催されることを知り参加することにした。
その音楽ユニットには自分の2年前の失恋にけりをつけることができる楽曲が存在し、その楽曲を聞けば何かが変わるかもしれない、この悩みをぶち壊してくれるかもしれないと思ったのが参加を決めた理由だった。今思うとだいぶ不純な理由だったと思う。
だが、不純な理由で参加を決めたそのライブは自分の望み通り、抱えていた悩みをぶち壊してくれた。
そこには自分の求めていた“非日常なセカイ”があった。
歌唱力、ステージ上の演出、曲の色に寄り添ったギターやキーボード、どれを取っても圧倒的だった。
公演中だけでなく終演後、もっと言えばライブから3週間経った今でもそのセカイから抜け出せないでいる。
今までこの手の不純な理由でライブに参加した場合は、お目当ての曲が聞けて満足して終わることが大半だった。だが、今回のライブだけはそれで終わらなかった。気付かされることがあった。
コロナ禍の中で行くライブがラブライブ!だけになっていた自分の視野が、そのライブに行くまで極端に狭まっていたことに今まで気付けなかったのだ。
そんな視野の狭まった自分は、自分の求める“非日常なセカイ”を生み出してくれる場が他にもあることを忘れていた。
目の前にあるラブライブ!だけが自分に“非日常なセカイ”を見せてくれる場だと思い込んでいた。今すぐじゃなくてもいつかは見せてくれるはずだと。
このライブを通して自分は無理してまでラブライブ!というコンテンツを追うのをやめようと決めた。ライブに行って自分だけがそのセカイには認識することができなくて辛い思いをするぐらいなら、行くのをやめた方が自分のためになるし、虹ヶ咲が追いかけたいと思えるコンテンツとなった彼にもこれ以上余計な気を遣わせないで済む。
だから自分の中でのラブライブ!はこの後に控えてるQU4RTZのユニットライブで終わりにしようと決めた。
もし、“特別な楽曲”に近づきつつある無敵級*ビリーバーを最後に聞くことができたら悔いなくきれいに終わらせることができる気がしたから。
あと、虹ヶ咲のユニットの中ではQU4RTZが一番好きだから。
7.ノンフィクション!!
少し話は逸れるが、出会ったタイミングが同じだったLiella!の話もしようと思う。
実は虹ヶ咲とは同時並行でLiella!も追いかけていた。
Liella!については同時期に触れ始めた虹ヶ咲と違ってアニメのストーリーが大好きだった。特に澁谷かのんが過去の自分を捨ててイップスを乗り越えるのではなく、過去の自分を受け入れて、過去の自分の背中を押してイップスを乗り越えるところが好きだった。
どこか澁谷かのんにはあの“特別な女の子”と重なるところがあり、そこから更に好きになったのかもしれない。
特に自分にとってTiny Starsは無敵級*ビリーバーほどではないにしろ、特別に近い楽曲であった。
過去の一件からなかなか前に踏み出せない澁谷かのんが唐可可と出会い、以前のような彼女に戻っていくキッカケとなったこの曲が大好きだった。
大好きなTiny Starsが聞けるならと、虹ヶ咲のライブに行くのと同時に、Liella!のライブにも行ってみたくなった。
結果として自分が参加した2ndツアーの横浜と大阪のライブは凄かった。
あの5人が作り出す、特に平安名すみれとペイトン尚未が凄かった。
2ndツアーでは実際にTiny Starsを聞くことができた。ライブに行ってみたいと思うキッカケだったこの曲を会場で聞けたことが嬉しくて涙が止まらず、演者が捌けてからもそのTiny Starsの余韻に浸っていた。
だが、その余韻を平安名すみれという女はぶち壊してきた。彼女らしい爆音と共に。
最初は心地の良い余韻をぶち壊してきた平安名すみれが許せなかった。
だが、平安名すみれのソロ曲、その後のダンスバトルパートと時間が進むに連れてどんどん目が離せなくなっていった。
平安名すみれがセンターを務めるノンフィクション!!が始まる直前に彼女が言い放った、彼女を象徴するセリフである「ギャラクシー!!」で会場は完全に平安名すみれの、それを演じるペイトン尚未によるセカイができあがっていた。
そこからの2曲、自分は完全にペイトン尚未の作り出したセカイの中にいた。
自分はもう二度と出会えないと思っていた、演者が作り出す“非日常なセカイ”を見せてくれるコンテンツに出会えたことがどうしようもなく嬉しかった。
あともう一押し、この最高と言える状態をさらに押し上げる何かがあれば、一席しか用意されていない“特別”という席を平安名すみれとLiella!の5人が無理矢理奪い取っていたと思うぐらいには圧倒されたライブだった。
ただ、そのあと一押しには最後まで出会えなかった。
あと一押しを探している間にLiella!2期生とアニメ2期が来てしまった。
2期の構成の酷さと、構成の酷さと相まってかなかなか心に響かない2期生加入後の楽曲はLiella!をその席から遠ざけてしまった。熱も冷めてしまった。
熱は冷めてしまったが一度はあの席に近づいたコンテンツの3rdツアーの千秋楽の埼玉公演ぐらいは行かなきゃ失礼だ、行けば何かが変わるかもしれないと思いチケットは用意した。
しかし、直前になってどうしても外せない用事がその日に入ってしまい参加できなくなってしまった。
参加できなくて悔しいという自分はそこにはいなくて、ライブに行ってイヤなところばかり目に入ってLiella!のことを嫌いになるぐらいならば、好きだったあのLiella!のまま、最高だったあの瞬間を美化してラブライブ!から離れられることの方が幸せだと思う自分がいた。
急用を言い訳にして逃げられることを喜んでいる自分がいたままLiella!は終わった。
8.La Bella Patria
だいぶ話が逸れてしまったので今回の本題の虹ヶ咲の話に戻る。
ターニングポイントとなったあのライブ以降自分の心はとても軽かった。長い間悩んでいたのが嘘のようだった。
この後に残ってるラブライブ!のライブは自分の大好きなQU4RTZのライブ。虹ヶ咲に興味を持ってからずっと行きたかったあのQU4RTZのライブ。
QU4RTZの作り出すセカイに自分が入ることができて心から楽しめたのなら、最後はちゃんと楽しめたと心からの笑顔と一緒に出てくればいい。最後までそのセカイを認識できなかったのなら、まだライブで聞けていなかったQU4RTZの楽曲が聞けて良かったと自分に言い聞かせて出てくればいい、これが最後なんだから深く考えないでヘラヘラ楽しんでくればいい。
どちらに転んだとしても大丈夫なように開園前にあらかじめ終わりかたを2パターン用意しておいた。
楽しめるようにちゃんと予習もして、ライブ前にはちょっと気合も入れた。
できる限りの準備はした状態で最後のライブのDay1が始まった。
初披露の楽曲はもちろん、QU4RTZのユニットライブでしか聞けないアコースティックアレンジも聞けた。
ちゃんと1年前のように心から楽しめていた。
ただ、Day1で楽しかったのはここまでだった。
ずっと、聞きたかったはずの無敵級*ビリーバーが終わってからは気が気ではなかった。1年間一緒に虹ヶ咲のライブに行っていた彼に「お前顔色悪いけど大丈夫か?」と言わせてしまうぐらいには酷い顔をしていたらしい。
無敵級*ビリーバーとは、一歩前に踏み出す勇気がなかなか出せず、目の前で輝いている子を後ろからただ眺めているだけの自分から変わりたくて、もっと輝ける自分になるために鏡の中にいるもう一人の自分に鏡の前に立つ自分が魔法をかけてもらうという認識だった。
鏡の中にいるもう一人の自分の楽曲ではなく、鏡の前に立つ女の子の楽曲だとずっと思っていた。
この認識が正しくて、ステージ上でも鏡の前に立つ女の子のように、変わりたいのだけどちょっと自信がない、キラキラとした歌い方ではないと思い込んでいた。
でも、ステージでの相良茉優の歌いかたや振り付けのイメージは、鏡の中にいるもう一人の自分の方だった。
自分の解釈と演者の解釈が真逆だったとライブ中に気付かされた自分は、またA・ZU・NAのときのように自分一人だけ違う空間に飛ばされてしまった。
Day1は最後までその空間から抜け出すことができなかった。
終演後に知り合いと集まったときには「今まで聞きたかったQU4RTZの楽曲が聞けてよかった」とだけ言った。嘘は言っていない。
その直後、今日一番の楽曲は何かという話題になった。
「お前はもちろん無敵級*ビリーバーだろ?ずっと聞きたいって言ってたし聞けて良かったな!」
こう言われ続けたが、自分のDay1での一番の楽曲はLa Bella Patriaだった。
自分の解釈が真逆であったことを最後まで受け入れられなかった無敵級*ビリーバーよりも、いつだってfor you!でミスをしてしまった指出毬亜が、そのミスを帳消しにするために100点ではなく150点を狙いに行って200点を叩き出したLa Bella Patriaが自分には一番輝いて見えた。
その瞬間だけは指出毬亜が作り出す“非日常なセカイ”の断片が見えたような気がした。
無敵級*ビリーバーが“特別”に近い存在とはいえ、その日一番輝いていた楽曲を差し置いてまで一番とは言いたくなかった。自分の気持ちにまで嘘は吐きたくない。
9.Not Sad
解散後家に着いた自分はこの解釈違いがなぜ起きたのかが気になって仕方がなかった。
公式の解釈が間違いで自分の解釈が正しいという可能性はほぼゼロだろう。だって、昨日のあのステージを作り上げた相良茉優が間違いである訳がないのだから。
とりあえずは何度も読み返した無敵級*ビリーバーの歌詞をまたイチから読み返すことにした。
いつものように読み返した限りは自分の考えは変わらなかった。鏡の中の自分の楽曲ではなく、鏡の前に立つ自分を元気づける曲だとしか思えなかった。
次は歌詞ほど繰り返し見ているわけではないアニメーションPVをじっくりと見ることにした。
アニメーションPVで今日のライブ中に感じた解釈違いの場所をしっかりと確認することができた。
その場所とはBメロのこの場所だった。
「努力しても追いつけないのかな」
『ううん!弱気で凹んでちゃダメ』
「私にだってできるはずなのにな」
『超絶 誰より イチバンだもん』
何度も繰り返すようだが自分はこの楽曲は鏡の前に立つ女の子の楽曲だと思っている。この歌詞で言えば「」に当たる場所だ。
歌詞“だけ”を読み込んでいればこの解釈に辿り着くのも決して間違いではないだろう。
だが、実際のステージでの相良茉優の振り付けは『』に当たる部分だった。
そこでやっと、自分は今までずっと虹ヶ咲では楽曲の話しかしていないかったことに気付くことができた。アイドルについて掘り下げた話は一切して来なかったのだ。
アイドルのことを見ていないくせに、アイドルが作り出すセカイが認識できないのは演者のせいというのはあまりにも都合が良すぎるバカな話だ。
一度アニメを嫌いになってアイドルへの掘り下げをやめた自分は、無敵級*ビリーバーを歌う中須かすみのことすら見ようとしていなかったのだ。
本当に最後のライブになるDay2だけはステージ上に立つアイドルを、今から全員のことを見るのは無理だとしても、中須かすみだけはちゃんとこの目で見てみようと決めた。
迎えたDay2当日。
この日の無敵級*ビリーバーは昨日の無敵級*ビリーバーと違ってキラキラと輝いて見えた。
アイドルとしてステージに立つ中須かすみは鏡の前に立つ「」の中須かすみではなく、鏡の中にいるもう一人の『』の中須かすみであるべきだろう。
ステージの上の中須かすみがファンに向かって弱さを見せるわけがない。
こんな当たり前のことにもアイドルを見ていなかった自分は気付くことができなかった。
そこからは簡単な話だった。
楽曲だけでなくステージに立つアイドルもちゃんと見ると、そこには自分がずっとラブライブ!にも求めていた“非日常なセカイ”があった。
最後の、本当に最後の一瞬だけでもこのコンテンツにちゃんと向き合えた気がして嬉しかった。やっと他の人が見ていたセカイを自分も見ることができたんだと。
もし、最後までアイドルに向き合おうとしないままこのコンテンツから離れていたら、もっと最悪な終わりかたになっていただろう。
「虹ヶ咲は何も良いところがないコンテンツだ、強いて言えばいい楽曲が何曲か存在するだけだ。」
などと言っていてもおかしくなかった。
最後にそれを教えてくれた中須かすみというアイドルにはありがとうとしか言えない。
今日無敵級*ビリーバーは胸張って“特別”だって全人類に言えた。中須かすみの作り出す“非日常なセカイ”が一番輝いていたって心の底から言えた。
最後の最後で、一つしかない席に図々しく乗り込もうとしてきた中須かすみを、無敵級*ビリーバーを一生忘れない。
1年間本当に楽しかったです。
ありがとうございました。